井出歯科医院では、虫歯、歯周病、根の治療、詰め物、被せ物、
ブリッジ、入れ歯など、一般的な歯科治療を行っています。
同時に、長年の診療を通して「歯だけを見ていてはいけない」と考え、
舌小帯短縮症、低位舌、歯並び、噛み合わせ、矯正治療後の後戻り、
嚥下(飲み込み)など、舌の機能についても取り組んできました。
初めて来院される方には、まず井出歯科医院がどのような考え方で
診療しているのかを知っていただきたいと思います。
「銀歯が取れました。つけてください」という方へ
「銀歯が取れただけだから、そのままつけてもらえば終わり」
と思われるかもしれません。
しかし実際には、取れた銀歯やクラウンの下で、
虫歯が進んでいたり、土台になっている歯が割れていたり、
虫歯が神経近くまで進んでいることがあります。
神経が露出するほど虫歯になっていたり、
根の中に入っていた材料が出ていたり、
根の再治療が必要になっていることもあります。
歯根そのものが割れている場合もあります。
必ずそのままつけ直せるとは限りません。
必要に応じてレントゲンなどで確認し、
なぜ取れたのか、そのまま戻せるのか、根の治療が必要なのか、
新しいクラウンが必要なのか、抜歯が必要なのかをご説明します。
急に来院された場合には、その日は穴を仮にふさぐなどの
応急処置だけを行い、本格的な治療は改めて予約を取って
行う場合があります。
これは「治療してくれない」のではありません。
必要な時間を確保して、きちんと治療するためです。
納得できなければ、取れた銀歯・クラウンはお返しします
説明を聞いて納得できなければ、
無理に井出歯科医院で治療を続ける必要はありません。
かかりつけ歯科医院で「今日は診られません」と言われて
当院へ来られた場合でも、緊急性がなければ、
もう一度かかりつけ歯科医院へ連絡して、
日を改めて予約を取ってください。
これまでその歯を治療してきた経過を一番よく知っているのは、
元のかかりつけ歯科医院です。
急患だから、すぐ診てもらえるとは限りません
昔は「歯が痛くなったら歯医者へ行く」という時代でした。
現在は計画診療が中心です。
今日はどの歯を治療するのか、麻酔が必要なのか、
根の治療なのか、被せ物を入れるのかなどを考え、
必要な時間を確保して予約を組んでいます。
井出歯科医院では、予約した患者さんをできるだけ待たせず、
予定した治療を行うことを大切にしています。
急患を無制限に入れれば、
時間どおりに来院した患者さんを待たせることになります。
「今日電話したから、今日必ず診てもらえる」
という診療体制ではありません。
また、地域では歯科医師の高齢化や閉院も進んでいます。
一方で患者さんも高齢化し、高血圧、心疾患、糖尿病、
腎疾患、透析、骨粗鬆症などの病気を持ち、
多数の薬を使用している方が増えています。
特に抜歯などでは、
「痛いから、すぐ抜いてください」だけでは治療できません。
服用薬、注射薬、出血に関係する薬、
骨粗鬆症治療薬などを確認してから治療する必要があります。
「神経を取る」を死刑宣告だと思わないでください
「神経の治療が必要です」と説明すると、
「この歯はもうダメなんですか?」
と思われる方がいます。
しかし、虫歯が神経まで達している、神経が感染している、
根の先に炎症があるなどの場合、
歯を残すために根管治療が必要になることがあります。
「神経を取る」という言葉だけで判断しないでください。
現在どうなっているのか。
治療後どうするのか。
井出歯科医院では必要に応じてパノラマレントゲンなどを
患者さんと一緒に見ながら説明します。
分からなければ聞き直してください。
保険診療には患者さんには分かりにくいルールがあります
「気に入らなければ、すぐ作り直してもらえばいい」
と思われるかもしれません。
しかし、保険診療では自由に何度でも作り直せるわけではありません。
入れ歯、レジン充填、CAD/CAMインレー、CAD/CAM冠、
クラウン、ブリッジなどには、それぞれ管理や再治療、
再製作についてのルールがあります。
クラウンやブリッジなどでは一定期間の管理が関係する場合があります。
歯の場所、第2大臼歯の状態、使用材料、金属アレルギーなどによって
適用条件が変わるものもあります。
保険診療のルールです。
当院で被せた歯が折れた、グラグラする、外れた場合には、
まずご相談ください。
抜歯してブリッジなど別の治療が必要になる場合にも、
管理との関係があります。
例外的な取り扱いができる場合もありますので、
自己判断で諦めずご相談ください。
入れ歯は完成前の「試適」が大切です
保険診療の入れ歯は、新しい義歯を製作した後、
原則として一定期間、新しい義歯を再製作できません。
だから井出歯科医院では、完成前の
試適(してき)を大切にしています。
人工歯を仮に並べた状態で口の中に入れ、
歯の位置、長さ、形、前歯の出方、噛み合わせ、見た目を確認します。
必ず鏡を見てください。
部分入れ歯の場合、残っているご自分の歯が挺出したり、
歯肉が下がったりして長く見えていることがあります。
その隣に人工歯を並べるとき、
人工歯だけ短くすれば自分の歯との間に段差ができます。
残っている歯に合わせると、人工歯も長く見えたり、
前に出て「ビーバーのようだ」と感じたりすることがあります。
患者さんに鏡で確認していただいてから完成させます。
「クリーニング」と「歯石を取る」は違います
歯についた着色や汚れを落とし、
きれいにすることを目的としたクリーニングは予防的な処置です。
当院では自費診療です。
一方、歯石症、歯肉炎、歯周病などの病気があり、
その治療として歯石を除去する場合には保険診療になります。
汚れをきれいにする → クリーニング・予防・自費
歯石症・歯周病の治療として歯石を取る → 病気の治療・保険
歯石を取ってほしいのであれば、難しい言葉を使わず、
「歯石を取ってください」
とそのまま言ってください。
井出歯科医院が長年取り組んできた「舌」の治療
歯科では、虫歯、歯周病、入れ歯、インプラント、
矯正などについて非常に細かく調べます。
しかし、その歯の内側には毎日舌があります。
舌は、食べる、飲み込む、話す、食べ物をまとめる、
歯列の内側から力を加えるという重要な働きをしています。
井出歯科医院では長年、
舌小帯短縮症の診療に取り組んできました。
舌を動かすのは筋肉です。舌小帯は動きを制限する組織です
ここが舌小帯短縮症を理解するために最も重要です。
舌を動かす主体は筋肉です。
一方、舌小帯は筋肉そのものではなく、
粘膜や結合組織を含む組織です。
舌小帯短縮症では、この組織によって
舌の動ける範囲に制限がかかっています。
舌 = 筋肉によって動くもの
舌小帯 = その動きを制限する組織
結合組織による制限を切っても、
舌を動かす筋肉が自動的に動き始めるわけではありません。
舌小帯短縮症は、手術をしただけでは治りません
舌小帯を切っただけでは、舌小帯短縮症は治りません。
手術によって、舌の動きを制限している組織を
解除することはできます。
しかし、患者さん自身が舌を上へ動かせなければ、
舌は元の低い位置へ戻ります。
手術で切ったところは傷です。
舌が元の位置に戻ったままであれば、
その位置で傷は治っていきます。
だから、
「手術をしてから舌の運動を始めればよい」
ではありません。
手術の前から自力で舌を上へ持ち上げる
井出歯科医院では、まず舌の動きを見ます。
舌を前へ出せるか。
上へ持ち上げられるか。
左右へ動かせるか。
そして特に重要なのが、
手術前から自分の力で舌を上へ持ち上げられること
です。
↓
自分で舌を上げられるようにする
↓
必要な場合に舌小帯の制限を外す
↓
術後も舌を上へ動かし、牽引する
↓
傷が治った後も舌を動かし続ける
「切りっぱなし」で終わらせない
小児科で行われる舌小帯切開、
歯科医院で行われるハサミやレーザーによる切開などがあります。
しかし重要なのは、
ハサミなのかレーザーなのかではありません。
切った後に舌を上げられるのか。
傷をどのように治すのか。
再癒着をどう防ぐのか。
広げた可動域をどう維持するのか。
傷には治ろうとする力があります。
舌を元の位置に戻したままなら、
傷もその位置で治癒していきます。
いわゆる「舌癒着症」という考え方についても、
一般的な舌小帯短縮症とは分けて、
実際の舌の動きと機能を見る必要があります。
shita fitness ― 手術は一日、舌は一生使います
手術は一日で終わります。
しかし舌は一生使います。
だから井出歯科医院では、
shita fitness(舌のフィットネス)
を大切にしています。
舌を上へ上げる。
前へ伸ばす。
左右へ動かす。
その位置を保持する。
毎日使う。
手術を受けた人だけではありません。
手術を受けない人にも舌の運動は大切です。
自分の舌を自分で動かし、その機能を維持することが重要です。
低位舌と歯並び・矯正後の後戻り
舌が低い位置にある低位舌や、
舌を前へ押す癖があれば、
毎日繰り返し歯列に力が加わります。
症例によって、反対咬合(しゃくれあご)、
下顎の空隙歯列、上顎前歯の前突、
正中離開、開咬などとの関連を考える必要があります。
矯正治療できれいに歯を並べても、
舌が以前と同じように歯を押し続ければ、
矯正後の後戻りの一因になることがあります。
舌は詰め物やインプラントにも触れています
舌は非常に敏感です。
インレーやレジン充填では、噛む面だけでなく
隣の歯との間の隣接面にも舌が触れます。
形に違和感があれば、舌は何度もその場所を探ります。
また舌は毎日、歯や補綴物に力を加えています。
インプラントについても、入れて終わりではなく、
噛み合わせだけでなく舌の位置や動きも考える必要があります。
食事の最後は「嚥下」です
歯で噛んだだけでは食事は終わりません。
食べ物を飲み込むことを
嚥下(えんげ)といいます。
↓
舌で食べ物をまとめる
↓
舌で喉へ送る
↓
気道を守る
↓
食道へ送る
歯だけで食事をしているわけではありません。
歯、舌、唇、頬、顎、喉が協力しています。
高齢者の誤嚥性肺炎を考える場合にも、
口の中を清潔にするだけでなく、
食べ物をまとめて送り込む舌の機能と
嚥下機能を考えることが大切です。
「黙食」の大切さ
食べながら話せば、舌は「話す」「食べ物をまとめる」
「飲み込む」という複数の仕事をしなければなりません。
まず噛む。
舌でまとめる。
飲み込む。
口の中が空になってから話す。
特に高齢者では、
食事中は食べること、飲み込むことに集中することも大切です。
最後に ― あなたの口の中を処置している人は誰ですか?
これは最近始まった問題ではありません。
歯科医院には、
歯科医師、歯科衛生士、歯科助手
がいます。
しかし同じようなユニフォームを着ているため、
患者さんから見ただけでは区別がつかないことがあります。
「いつもの女の人が歯石を取った」
「女の人が型を取った」
「女の人が被せ物を削って合わせた」
「女の人がレントゲンを撮った」
「女の人がスキャナーをした」
と言われても、その人が歯科医師なのか、
国家資格を持つ歯科衛生士なのか、
歯科助手なのか分かりません。
患者さんに、資格と業務の違いが十分伝わってこなかったことが問題です。
歯科医師・歯科衛生士・歯科助手は同じではありません
歯科衛生士は国家資格を持つ医療従事者です。
歯科助手とは資格も業務範囲も異なります。
そして、歯科衛生士も歯科医師と同じではありません。
患者さんに基本的な違いを知っていただくために、
○・△・×で示します。
| 処置・業務 | 歯科医師 | 歯科衛生士 | 歯科助手 |
|---|---|---|---|
| 診断・治療方針の決定 | ○ | × | × |
| 歯を削る・虫歯治療 | ○ | × | × |
| 根管治療 | ○ | × | × |
| 歯石除去・スケーリング | ○ | ○ | × |
| レントゲン照射 | ○ | × | × |
| 印象採得(型取り) | ○ | △ | × |
| 口腔内スキャナー | ○ | △ | × |
| インレー・クラウン・ブリッジの口腔内調整 | ○ | △※ | × |
| 局所麻酔 | ○ | △※ | × |
| 器具の準備・片付け・消毒 | ○ | ○ | ○ |
△=歯科医師の指示・管理、具体的な行為や条件によって取り扱いが異なるもの
×=その資格では行えない業務
※「△」は「自由に行ってよい」
「歯科医師と同じことができる」という意味ではありません。
口腔内スキャナーは「写真を撮るだけ」ではありません
形成した歯を口腔内スキャナーで読み取り、
そのデータを使ってインレーやクラウンを製作する場合があります。
これは単なる写真撮影ではありません。
形成した患歯では、形成量、マージン、歯肉、出血、咬合、
この状態で補綴物を製作してよいかなどを確認する必要があります。
保険診療でも光学印象として評価される診療工程です。
歯科医師が責任を持って行います。
対合歯などの情報を採ることと、
実際に形成した患歯を読み取って補綴物製作につなげることは
同じではないと考えています。
補綴物の調整も歯科医師が行います
インレー、クラウン、ブリッジは、
ただ入ればよいわけではありません。
適合、隣接面、噛み合わせ、高さ、形、
舌が触れた感覚などを確認します。
歯科医師が責任を持って行います。
歯科衛生士による麻酔注射について
現在、一定の条件のもとで歯科医師の指示を受けた
歯科衛生士が浸潤麻酔を行うことを想定した研修があります。
麻酔は「注射針を刺して薬液を入れること」だけではありません。
患者さんの全身状態、服用薬、アレルギー歴を確認し、
麻酔中の状態を観察し、異常が起きれば判断して対応する必要があります。
血管迷走神経反射、過換気、血圧や脈拍の変化、
薬剤への反応、そしてまれでもアナフィラキシーなどの
緊急事態があります。
そのため当院では局所麻酔は歯科医師が行います。
井出歯科医院では歯科助手に医療行為をさせません
井出歯科医院では歯科助手に、
歯石除去・スケーリング、虫歯を削る、レジン充填、
根管治療、形成した患歯のスキャン、
インレー・クラウン・ブリッジの最終的な口腔内調整、
レントゲン照射などを行わせません。
歯科衛生士が勤務していた時期にも、
「歯科衛生士だから法律上できる可能性がある」
というだけで、歯科治療や補綴物の最終調整などを
何でも任せる診療は行ってきませんでした。
富士市でも無資格者による歯科医療行為が問題になりました
富士市でも過去に、無資格の歯科助手に歯科医療行為を
させた疑いで、歯科医師と歯科助手が逮捕された事件が
報道されています。
この事件の後、歯科医師・歯科衛生士・歯科助手が
どこまでの業務を行えるのかを改めて確認する動きもありました。
単なる肩書きの問題ではありません。
分からなければ、処置が始まる前に聞いてください
ユニフォームでは資格は分かりません。
「先生ですか?」
「歯科衛生士さんですか?」
「歯科助手さんですか?」
「この処置はどなたが行うのですか?」
と聞いて構いません。
失礼ではありません。
患者さんには、誰が自分の身体に処置をするのかを
知ることが大切です。
患者さんが
「この人はいったい何の資格を持っているのだろう」
と疑いながら治療を受ける状態にしてはいけないと思います。
会話も大切にしています
井出歯科医院について、昔の話をすることを
「インフォームドコンセントと勘違いしている」
という趣旨の口コミが書かれたことがあります。
もちろん、昔話そのものがインフォームドコンセントではありません。
しかし、患者さんとの会話から分かることがあります。
以前どんな治療を受けたのか。
どのような説明を受けたのか。
何を不安に思っているのか。
どんな治療を希望しているのか。
治療内容を本当に理解しているのか。
問診票だけでは分からないことがあります。
患者さんと話をすることも大切な診療の一部です。
井出歯科医院が大切にしていること
銀歯が取れたときも、神経の治療をするときも、
入れ歯を作るときも、舌小帯短縮症を治療するときも、
大切なのは患者さん自身が、
自分の口の中で何が起きているのか。
なぜその治療が必要なのか。
誰がその治療をしているのか。
を知ることです。
分からなければ聞いてください。
納得できなければ、もう一度説明を聞いてください。
そして舌小帯短縮症では、
舌を動かすのは筋肉です。
舌小帯は、その動きを制限する組織です。
だから「切れば治る」ではありません。
↓
必要なら制限を解除する
↓
術後も牽引する
↓
その後も舌を動かし続ける
これがshita fitnessです。
歯だけを見るのではなく、
歯、舌、歯並び、噛み合わせ、嚥下、そして患者さん自身を見る。
そして、
誰が診断し、誰が治療し、誰が責任を持つのかを
患者さんにも分かるようにする。
これが井出歯科医院が長年の診療で大切にしてきたことです。